Last UP Date: 2005年7月31日
月刊プチ通信 ２００５年８月号
アートと生活の交差点
芸術は生活の一部になり得るか？
皆さんに少し思い出して欲しい。自分の生活にアートがどれだけあるだろうか？たとえば音楽は明らかに生活の一部となっている現状がある。
音楽も今のような認識を受けるようになるまでには時間がかかったのではないだろうか。以前はロックやメタルは野蛮なものとされたり、 日本においてはラップミュージシャンがTVのチャート番組に顔を出すことは少なかった。
そしてこの職業もやはり食べていくには相当困難なジャンルだった。今でもそういう傾向はあるが・・。
しかし、ロックやメタル、ラップ、ファンク、テクノなどのジャンルはもはや市民権を受けられているし、
大ヒットを飛ばさなくてもインディーズと言う形での活動も行いやすくなってきている。
これは聴き手がそれだけ貪欲に自分にあった音楽、自分が本当に欲している音楽を探してる結果ではないだろうか？
それだけ音楽に対する興味関心を今日我々は持っていると言える。
では絵画や彫刻はどうだろうか？確かに最近では森ビルのエントランスに現代美術の彫刻が並んだり、 奈良美智のTシャツを着た若者がたまに居たりする。病院には必ず絵画が飾ってもあるが、
まだまだファッションやインテリアにカテゴライズされている。
この現状を打破し、芸術が市民権を得るようになる為には芸術に関する活動を行っている者がもっと社会との関わりを持つ以外に無いのだろう。
そういった考えの下、僕が参加しているフリーペーパーFifth-Jも発足した。このフリーペーパーを発案したのは脳科学者で、 彼も科学者の世界はその世界に閉じこもりがちだと言うことに違和感を感じているようだ。
特に私なんかも感じることは、芸術活動を行ってる人間はどうしてもその作業が閉じこもりがちになるせいか、
営業能力やコミュニケーション能力に欠けるケースが多いように思う。例えば、私の周りにはホームページを持った作家が少ないことも言える。
絵画や彫刻はアナログ的な仕事なのでデジタルに弱い人間が多く、サイト構築が技術的に不可能な人間が多いことも原因だが、
中には「パソコンの画面では自分の表現した色が正確に出ない」とか「立体を静止画にすること事態が無理」と言う者もいる。
しまいには「解る人間にだけ解れば良い」となる。僕も作品を作る者としてどれも一理あるとは思うし、根底にこのような考えは持ち合わせているが、
これに縛られていては、社会との接点は持つことが困難になる一方で、いずれ自分の首を絞めることになる。
これをすぐに解決するのは非常に難しいと思う。いきなり世間に向かって芸術に興味を持てと言っても始まらないし、
作家に「変われ」と言うのも難しい。例えばこういうのはどうだろうか？
学校や企業と作家のコラボレーションである。アパレル関係のお店に、マネキンに混じって人体の作家の作品があっても面白いし、 飲食店に飾る絵画も静物画や風景画、あるいは有名絵画のレプリカだけではなく、生きた作家の絵画があっても良くは無いだろうか。
よく見かける等身大パネルを作家が制作した等身像にしても面白い。
学校に関しては以前ここでも触れたが、現場の美術教員は作家で無いケースが多い。
元は作家でも厳しく忙しい教員生活の中で、制作しなくなるパターンもあるだろう。
そうなってしまうと生徒にとってはリアルな授業にならない。技術系の科目は他の教科と違い、実際作業を行うのでリアルさは増すが、
普段制作してない教員に教わると言うのはやはりリアルとは言えない。かと言って作家が授業をするのは不可能だ。教えるには教えるプロである教員の必要がある。
この問題を解消する為に、例えば年に何回か地元の作家の作品を体育館に展示するなどして、
生きた作品に触れさせれば生徒たちの美術に持つ関心も深さを増すのではないだろうか。
芸術が身近になる事で生活が少し楽しくなったり、空間が素敵になる可能性は大きい。皆さんも心の片隅にアートな感覚を持ってみてはいかがだろうか。
そして、芸術関係者は少しそれぞれの可能性を探りあいながら社会との接点を見出して欲しい。
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